フィールドプラス no.2
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14Field+ 2009 07 no.2*「バナナの足」研究会ウェブサイトhttp://www.geocities.jp/banana_rnj/ この連載企画では、各分野のフィールドワークがいかになされているのか、キーワードをもとにみていきます。 今回は、民族植物学、文化人類学、生態人類学のご専門のお三方に「食べる」をテーマに、フィールドワークする際に生じるさまざまな経験を語っていただきます。 フィールドにでかけて「食べる」ことを調査するとは、食べ物そのものについて追究することであり、食べるという行為がその社会において、どういう意味をもっているのかを考えることになります。そして、その地にはどのような食があるのかを知るために、おのずと調査者自身が食べることになります。 研究対象が単なる観察ではなく、調査者自らがヒトとしてその地に「居る」ために必須の食べるという行為は、いわゆる調査研究の時間だけでなく、自らの身体にもかかわってくることです。ヒトは食べないと生きていけないのだという共通項があるから、調査地の人たちから誘われ、まきこまれていくことにもなります。そしてそのとき調査者が、そのやりとりをどう感じ受け取るか、また匂う、触る、味わう、という身体の感覚機能にもかかわってきます。 いかに現地の人びとと仲良くなるか、というフィールドワークの手始めに悩む問題も、逆に「我々の食べものを勉強してくれてありがとう」とお礼を言われて受け入れられることもあるといいます(佐藤靖明)。「『食べる』ことを調査することは、ひとつの立ち位置を手に入れることだ」と佐藤万里江さんはいいます。 人間が必ず行う、「食べる」という行為。それを通じて、人が集まり、つながっていく。けれども、対象の食べ物自体は消えてなくなるもの。このはかないモノと、しかし不思議と人をむすびつけていく時空間を描き出す面白さが、「食べる」テーマには表出されます。 このお三方、いずれも食にたいする愛情も深く、そして執着も強く感じられます。 「食べる」ことが好き、そしてその研究をどう人に伝えればいいのか、とその方法を考える努力。食を結節点として(小松かおり)、地域をこえて研究者同士をもつなげる活動も生まれています(「バナナの足」研究会*)。 それでは、三人のフィールドでの、フィールドから広がる奮闘ぶりを披露していただきましょう。〈椎野若菜 記〉フィールドワークって何? テーマ:「食べる」

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