2002年「珍島・海南を訪ねる旅」のご案内

 新緑の候、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 今年も昨年と同様に韓国珍島の民俗文化と伝統芸術に触れる旅行を企画してみました。珍島は、私が30年近く文化人類学の現地研究を続けてきたフィールドであります。また珍島の友人たちがこの時期に主催する郷土祝祭「珍島平和祭」は、民間の有志たちの呼び掛けによって地域活性化の一環として企画したもので、伝統的な民俗文化を通して珍島の歴史と生活をふりかえり、明日への展望を切り開こうとするものであります。この珍島の海域ではこれまで幾多の戦乱の度に多くの人々が犠牲となってきました。この祭りでは、こうした人々の魂を敵味方の区別なく、珍島の伝統的な巫俗の慰霊儀礼(シッキム・クッ)と多彩な民俗芸能によって慰めようとするものであります。伝統芸能としては韓国でも高い評価を受けている地元のチームばかりでなく、昨年と同様に光州からも一流のチームが参加するほか、今年も大学生のチームが参加する予定です。
 韓国旅行といえば、これまではソウルなどの大都市や慶州などの古都がもっぱら対象となってきましたが、この旅行では、中央の国家的な記念物や名勝旧蹟あるいは都会生活とは一味異なる、地方の町や村の伝統的な生活に触れることを目指しております。また30年間も珍島を現地研究の場としてきた私にとっても、地元の人々によるこうした取組みはもはや他人ごとではなくなりました。研究と実践とが切り離せないほど両国の交流が緊密になってきたとも言えましょう。私も今年度は4月からソウル大学校に招聘教授として滞在しますので、この旅行を企画した者として現地でもできるかぎりお役に立てるよう、以前に私が研究のため長らく滞在した村を皆様と一緒に訪ねたいと思っております。
 この旅の趣旨に関心のお有りの方はふるってご参加ください。またできるだけ多くの方にご紹介いただければ幸いです。
                   平成14年3月26日

                   企画者: 伊藤 亞人
                   連絡先:東京大学文化人類学研究室
                       Tel: 03-5454-6239
                       Fax: 03-5454-4351
                       ソウル大学校 人類学科
                       Tel: 82-2-880-6418
 

珍島とソウルを訪ねる旅の日程(2002年3月現在)

8月17日   成田(KE706 09:30-11:55) ++
(土曜)   関空(KE722 10:00-11:50)   +ソウル仁川着、昼食:バスで金浦空港へ
        名古屋(KE752 09:30-11:25)+
      15:30〜 ソウル金浦発(OZ8755)〜 木浦着 14:25
           木浦空港より専用バスで珍島邑へ(一時間程度)ホテル着
      18:00〜 珍島郷土文化ホテルにて土曜民俗公演 (〜19:00)
          夕食後 未定

18日(日曜) 9:00〜 招魂儀礼(ノッコンジギクッ)
           島内史跡等の見学:龍蔵山城(三別抄の拠城)見学
      14:00〜 出喪(挽歌)
       20:00〜  巫俗慰霊儀礼(シッキムクッ  〜24:00)

19日(月曜) 9:00〜  邑内:郷校、檀君殿見学、伝授館見学
              昼食(斜川里)
      午後  双渓寺・雲林山房見学など
      20:30〜 ヨルリムマダン:サルプリ舞、パンソリ、プクチュム(鼓舞)
          カンガンスルレー、田植え歌、珍島アリラン等 (〜23:00?)

20日(火曜)9:00〜  十日市見物、南辰美術館・南桃石城見学
           農村訪問(臨准面上萬里)、村で昼食、 風物(プンムル)?
           農家訪問、門中祭閣、書堂の祭閣、碑石、榧子樹、小学校
      18:00〜 夕食、自由時間

21日(水曜) 朝: 珍島出発 海南の緑袖陶窯跡・恐竜遺跡・尹善道故宅・大興寺
          霊巖の道甲寺見学
      17:00  光州空港より(KE    )にて空路ソウル金浦空港へ、ホテル着
      18:00   夕食、自由時間

23日(木曜)午前  民俗村(龍仁)見物、昼食も民俗村内
      15:30  民俗村出発 ソウル仁川空港へ
          ソウル発(KE705) 18:40-20:55 成田着
               (KE721) 19:05-20:45 関空着
               (KE751) 18:50-20:40 名古屋着
 

訪問する農村「珍島郡臨准面上萬里」の概況

概況
 珍島郡臨准面上萬里、邑内より車で25分、島の南側一周道路沿い
           珍島の風水上の名山の一つ女貴山の南麓に位置する。
 農業:水稲と畑作による農業、海苔とわかめの養殖
 戸数:現在約70戸
 住民:1972年当時は94戸、その後は過疎化と老齢化が進んで70戸に減少
 氏族構成は:全州李氏(37戸)、密陽朴氏(37戸)、慶州金氏(10戸)、
       新安朱氏(5戸)その他であった。
 特徴
 ・1972年の秋以来、私が文化人類学の現地調査のために幾度も訪問し滞在した村
 ・かつて書堂教育に熱心な村として珍島内でも知られた。
 ・1930年代の農村振興運動の当時、村ぐるみの熱心な自治活動によって知られた
 ・1930年代に村人の手で貯水池を2つ築造し、その運営のための水利契が存続して
  いる。
 ・家庭の民俗信仰や年中行事、村祭り、綱引き、虫祭なども当時はよく守られていた。

 村にあるもの:
 ・1973年まで村の祭り(コリジェ)の祭場となっていた神木
 ・天然記念物(榧の大木)111号:榧の大木、
 ・寺院:萬興寺/文化財指定を受けた五重石塔と民俗仏教的なミロク石佛あり
 ・虫祭(山祭)の祭壇と泉(ただし村はずれの山腹に位置する)
 ・各門中の祖先の位牌を祀る祭閣(全州李氏、密陽朴氏、慶州金氏、新安朱氏)
 ・かつての書堂の建物(現在民家)および書堂の先人を祀る祭閣
 ・石碑類:地方儒者を讃える記念碑(学行碑)
      農村振興会の記念碑、農村振興会による孝子・烈女表彰碑、
      有徳者を讃える追慕碑、学行碑、記念碑など多数
 ・集会所、敬老会館、共同浴場、共同倉庫、共同井戸、精米所、店、教会
 ・貯水池(2か所)は1930年代に村人が水利契を組織して自力で建造したもの、
  その運営のための水利契も存続している。
 ・農家における多彩な土器(甕器)、民間信仰の対象であるソンジュの甕、チ?スク甕
  竈王(チョワン)、プルトなどが、他のどの村よりも守られていた。
 

参考文献
 伊藤 亞人著『韓国珍島の民俗紀行』青丘文化社、1999年7月
            〒 160-0021 東京都新宿区歌舞伎町 2-42-13東広ビル
            Tel 03-5286-0806 Fax: 03-5286-0810  ¥2,800