別表3:現行「小児錦」文献の使用状況についての聞き取り調査表
Place |
Date |
Informant |
Age |
Sex |
Ethnicity |
小児錦の認識 |
小児錦の読解 |
小児錦の習得 |
小児錦の使用 |
民族語の小児錦 |
蘭州 |
3月6日 |
宗教用具店店主 宗教用具店に居合わせた宗教関係者らしき老人たち |
いずれも6-70代 |
男 男 男 男 |
回族 |
「アラビア文ないしペルシャ文で書写した漢語.発音は当地の音.アラビア文とペルシャ文は混用.比率は人それぞれ」. |
店主:「私は読めるが,読めない者が多い」. 老人A:『小経淡比海』を音読するも,途中でつかえてしまう. |
―――― |
―――― |
―――― |
蘭州 |
3月6日 |
宗教道具店店主 |
30歳位 |
女 |
回族 |
定義どおり認識. |
「我々は読める」. |
―――― |
―――― |
―――― |
臨夏 |
3月8日 |
経書店店主 漢字もよく解する |
3-40代 |
男 |
回族 |
定義どおり認識. |
「自分自身は読めない」. |
「清真寺で教育を受けた者は読めるが,あまり多くはない」. |
*左参照. |
|
臨夏 |
3月8日 |
経書店店主 漢字はあまり解さない |
3-40代 |
男 |
回族?;風貌は東郷族? |
定義どおり認識. |
「自分自身は読めない」. |
―――― |
・
「東郷族が読むもの」. ・
「買っていくのは主に白頭人=老人である」. |
*左参照. |
臨夏 |
3月10日 |
経書店店番 |
20歳位 |
男 |
回族 |
「小経」を通常の漢語文と混同. |
「あまり読まない(読めない)」 |
―――― |
―――― |
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臨夏 |
3月10日 |
全義拱北満拉2名 (Qadiriyyah) |
いずれも12歳 |
男 男 |
満拉@:回族(自称「南郷族」) 満拉A:東郷族 |
・
通常の漢語文と混同.(「小経は使う.小経とは漢文のことではないか」). ・
定義を説明→初級アラビア文と混同. |
「読める」.(?) |
「現在習っている」.(?) |
再三定義を説明したところ,満拉@が,「それならば家にある」と答えた. |
満拉A:「東郷語の小経があるか?」→「知らない」. |
大河家 |
3月9日 |
刀剣店manager |
35歳位 |
男 |
回族 |
「知っている」. |
―――― |
―――― |
―――― |
―――― |
大河家 |
3月9日 |
刀剣店店主 漢語は達者 |
年齢不詳 |
男 |
保安族 |
「知っている」. |
「読める」(?). |
―――― |
「使っている」. |
「保安語の小経はない.小経は漢語のみで,保安族に文字はない」.「アホンの講経も主に漢語出行なわれる」. |
大河家 |
3月9日 |
刀剣店店主 |
40歳位 |
男 |
回族 妻は保安族 |
「知ってはいるがよく分からない」. |
―――― |
―――― |
―――― |
―――― |
大河家 |
3月9日 |
清真寺脇民族用品店店主父娘 |
60歳位 23歳位 20歳位 |
男 女 女 |
ムスリム |
定義どおり認識. |
妹娘:「読める」→『信仰問答』の一節を朗読. |
妹娘:「清真寺の女学で習った」. 父:「清真寺のアホンは読める」. |
父:「読める者は多く,家の者はみな読める」→自分でも朗読して見せた. |
―――― |
東郷 |
3月10日 |
鎖南清真大寺満拉2名 漢字は解する |
いずれも10代 |
男 男 |
ともに東郷族 |
当初は「小経」と通常の漢語文や初級アラビア語を混同していたようだが,再度説明すると理解した. |
「ゆっくりとならば読める」. |
「清真寺では教えない」. |
「講経のときに使用する」.「清真寺には小経の本もある」.「ふだんは使わない」. |
「日常語は東郷語だが,書写は漢語でする.東郷族に文字はない」.「東郷語をアラビア文字で書写したものはない」. |
西寧 |
3月12日 |
経書露店店主 漢字を解する |
70歳台 |
男 |
回族 |
定義どおり認識. |
「読める.アラビア文を習ったことのある者なら字母が分かるので読める」. |
「清真寺では教えない.家の中で習う」. |
・
小経の本:「少しだけアラビア語を習っていて,経書の内容を理解したい人々が買って行く」. ・
「1958年以前は多くの人が小児錦を解し,使ってもいたが,今はみな漢文を使う.近年のアホンは中等・高等教育を受けている者が多く,アラビア文・漢文の両方に通じている」. |
―――― |
西寧 |
3月12日 |
民族用品店店主 漢字をよく解する |
壮年 |
男 |
回族 |
「臨夏が発祥地で,アホンたちがアラビア語・ペルシャ語から漢語に当てはまる字母を拾って創り出した文字である」. |
「多少は読めるが,あまり読めない」. |
「清真寺で公式には教えておらず,自分も習った事はないが,10日もあれば覚えられる」. |
・
「1950年以前は漢字を書けないアホンが互いに手紙を書いたりする時に用いていた」. ・
「小経の本は,若い女性や主婦たちが買って行く.彼女たちが小児錦を学ぶ目的は,教法上の簡単な常識を覚えたり,手紙を書いたりするためである. ・
「小児錦で手紙を書くことは今でもある.新疆のアルタイに住む自分の友人たちは,学校へ行ったことがなく,漢文を解さないので,宛名以外は小経で手紙を書いて来る.自分は,分からないときには他の友人に読んでもらう」. |
―――― |
西寧 |
3月12日 |
民族用品店店主 |
壮年 |
男 |
回族 |
「ペルシャ語・ウルドゥー語を導入したピンインである」. |
「読める」. |
・
「ここでは,男女ともみな習う.最も学びやすい表記法からだ」. ・
「清真寺では専門には教えておらず,みな独学で学んでいる.非常に学びやすい.ただ,以前は清真寺で教えていたこともある」. ・
「自分はこれをピンインとして覚えたが,多くの人は音の組み合わせで覚えており,個々の字母の説明はできない」. |
・ 「多くの人は,小経を読めるが書けない.メモなども漢字を使う」. ・
「発音は当地の方言を反映している.青海には青海の小経があり,甘粛の小経とはまた異なる.ただ,青海の小経にはマニュアルがある(→『穆斯林信仰問答』附録の字母表)」. |
―――― |